道なき道をまわりみち

まわり道の多い私の体験談。誰の得になるかもわかりませんが、勝手に書こうと思います。

読書の毒

中学生の頃、国語教師がこんな事を言った。

「想像力があるという事が昨今非常に素晴らしい事の様に言われるふしがあるが、必ずしもそうとは限らない。むしろ想像力が逞しすぎると、現実が見えなくなり、まともな思考を邪魔する可能性すらある。特に読書は適量を守れば問題ないが、実生活から離れる行いであることに違いなく、過度の読書は危険な一面があるという事を理解する必要がある」

当時は可笑しなことを言う人だな、位に思って特に気にもとめなかったが、近頃、だんだんとそれは一理あるやもしれぬと思う様になった。

昔から子供がゲームをしたり漫画を読んだりしていると、大人からは遊んでばかりいる、不真面目な子供だと糾弾された。しかし、なぜかその対象が本だと、何も言われない。それどころか、場合によっては褒められたりする。

さらに、うちの子は本を読まないと嘆かれたり、〇〇さんちのお嬢さんは本をたくさん読んで良い子だわね、と賞賛される事さえある。

大人になった今でも、大会社の社長さんや、社会的に成功している人間が、私は1年に何百冊も本を読みますと言っていたり、著名人が本を読むことが自分にいかに良い影響を与えたかを語ったりする。

たしかに素晴らしい面は沢山ある。もちろん良書はたくさんあるし、適量を守れば読書は確かに素晴らしい。

これは全くの偏見だが、読書は紛れもなく良い影響しか与えないと断言する人は、実はそんなに読書が好きではないのではないかと思う。

過度の読書には危険な一面もある。

本当に読書好きな人なら、本はやめろと言われても読んでしまう魔力がある事を知っている。

それは時に家族や友人との会話を中断させ、外出を億劫にさせ、家事を滞らせ、睡眠を妨害する。

たとえ、今日は違う事をしようと思ったとしても、ついつい読んでしまう。その持ち歩きやすい形態から、ついついどこへ行くにも持って行ってしまう。

恐ろしい。

しかも、単価が馬鹿高い訳でもないから、読み終わればすぐさま別の本を購入するに至り、ついには1年365日ずっと本とともに暮らすことになる。

また、さらに恐ろしいことに、一般的には善良な行いとみなされているため、一見スマートに見えてしまうところがタチが悪く、本人ですら、その中毒症状を自覚していない可能性も高い。

確かにゲームや漫画よりも、内容が深い可能性は高いが、依存性、中毒性といった''毒''があることに変わりはないのではないだろうか。

かくいう私も、長年の自制心のなさから毒がまわり、もはや完全に身動きが取れない状況にある。

仕方がないので、悪い面は見て見ぬ振りをしながら、だましだまし生きていこうと思う。